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2025.6.7 (Sat.)

この週末は、栃木県のまだ見ぬ市役所を制覇する予定だったのだ。が、部活の面倒をみる役割が急遽飛び込んできた。
梅雨前の貴重な青空を見上げながら泣く泣く拘束される私。そして部活が終わると急いで溝の口から電車に乗り込む。
すでにサッカー観戦のチケット、しかもSS指定席を買ってしまっていたので、せめてそこだけはやってやるのである。
東武への直通運転で南栗橋へ、そこから東武宇都宮行きと1回の乗り換えで済んでしまうのがすごい。3時間かかったが。

というわけで、西川田駅で下車して「カンセキスタジアムとちぎ」こと栃木県総合運動公園陸上競技場へと歩いていく。
栃木SCの試合は12年前に観ているが(→2013.7.20)、気がついたら栃木県グリーンスタジアムは準本拠地扱いで、
栃木県総合運動公園陸上競技場をメインにするようになっていた。その事実に最近まで気づかなかった情報弱者です。
それで市役所めぐりとセットで初訪問スタジアムで観戦するつもりだったんだけどね、部活がね。ションボリである。

  
L: 住宅地の中に異様なスケールで現れた栃木県総合運動公園陸上競技場(以下、カンセキ)。ちょっとSFっぽさがある光景。
C: 西川田駅からだと、正面入口はとちのきファミリーランド方面から迂回することになる。なおトッキーの頭はエア遊具。
R: 南から見たカンセキ。国体の開催を見越して2020年にオープン。設計は久米設計+AIS総合設計+本澤建築設計事務所JV。

  
L: いちご一会とちぎ国体の炬火台。栃木県のいちご愛(というか、とちおとめ愛)は、かなり猛烈なものがある。
C: 正面入口はそのまま南側。しかしながらメインスタンドは西側なので、非常に間違えやすい。というか間違えた。
R: それでは初訪問スタジアムの一周を開始するのだ。まずは南西側から見たカンセキの全体。芝生が憩いの場。

  
L: 正面入口方面を眺める。  C: 東側。ランニングコースがあり、簡単にスタジアムを一周できるのがありがたい。
R: 北側はアウェイゴール裏の入口。これまた、栃木県のいちごに対する異様なまでの執念を感じさせる要素である。

  
L: 北西側。車で来るとこちらが入口となる模様。  C: 西側。キッチンカーがこの位置に並んでいるのがたいへん特徴的。
R: 「必翔神社」ということで簡素な鳥居と祭壇が置かれていた。お賽銭を入れると栃木SCのステッカーを1枚もらえる。

何も考えず紺色のTシャツで来ちゃったのだが、本日の栃木SCのお相手はザスパ群馬なのでアウェイサポみたい。
それにしても「ザスパ群馬」はややこしい。正式名称は「ザスパクサツ群馬」だが、呼称は「ザスパ群馬」だそうで、
どんどん草津要素が削られてもはや風前の灯火。もう湯もみ応援もやっていないようだし、つまんないなあと思う。
まあそれはとにかく、近場どうしの北関東ダービーということで、アウェイサポの比率はなかなかのものだった。
下野国と上野国の対戦なんだから、きちんと歴史を考慮して「毛野国ダービー」と称するべきだと僕は思いますが。

  
L: 中に入ってピッチを見下ろす。1階のSS席だとなかなか壮観だが、トラックの幅があってピッチがかなり遠い。
C: 2階に上がって南東側からピッチ全体を見たところ。  R: 気勢を上げる群馬サポの皆様。さすがになかなかの密度。

カンセキの中に入ると、かなり力の入ったスタジアムであることに驚かされる。栃木県が威信を賭けているのがわかる。
2階に上がって眺めてみるが、なかなかの傾斜。しかしそれと比べて1階の席はそんなでもなく、けっこう緩めな印象だ。
トラックの幅もしっかりあって、ピッチをずいぶんと遠く感じてしまう。これなら、2階席の方がむしろ観やすいかも。
すべてのスタジアムを制覇する目標があるので最近は新しくできたスタジアムばかり行っているが、他との差が気になる。
あと、いざ試合が始まると、バックスタンド上のライトがけっこう眩しい。これは地味に、設計上の盲点ではないか。
ちなみにカンセキは完全キャッシュレスとなっている。そのため、プリペイドカードを購入してからチャージが必要だ。
もちろんアウェイサポ向けに当日限りで払い戻し可能なカードも用意されているが、帰る前に一手間かかるのは煩わしい。
僕は完全キャッシュレスには断固反対の立場なので、面倒くさいし抗議の意味もあるしで、一切買い物をしなかった。

  
L: 仲よく手をつないでいるトッキーとザスパンダ。ザスパンダ初めて見たんだけど、なぜパンダ? 湯友どこ行っちゃったの?
C: 選手入場。栃木だけでなく群馬のフラッグまでしっかり用意するなど、だいぶアウェイ側を歓迎した演出となっていた。
R: ゴール裏の栃木サポは青と黄色のフラッグを振って迎える。他の席と比べ、ゴール裏の人口密度が非常に高かった印象。

さて試合開始。栃木も群馬も仲よくJ3に降格してきた同士だが、正直なところ昨季までJ2にいたとは思えない内容。
栃木が8位、群馬が14位とはっきりしない順位で、それを反映する冴えない展開。どちらかというと栃木がボールを保持、
群馬がカウンターという構図なのだが、栃木はゴール前でもたいへん人任せでなんとも消極的。シュート撃つ気あるんか。
対する群馬の最終ラインはボールを持つとかなり危なっかしいが、中盤がそこそこ収まるのでなんとかなっている。
でもその先の攻撃が単調で、サイドにつけるのはいいが、栃木の守備に粘られてフィニッシュまで持っていけない。
そして両軍ともファウルがどうにも多く、それでリズムがつかめない。懸命に戦っているが、技術が伴っていない試合。

  
L,C,R: これだ!といったシーンを撮っているので、写真を貼り付けると熱戦に見えるけど、正直かなりしょっぱい前半だった。

これといったシーンもないまま45分が過ぎてハーフタイム。素早くトイレに行くと、スタジアム内を動きまわってみる。
新しいスタジアムということもあってきれいだし工夫を感じるが、何より衝撃的だったのが人を少なく感じることである。
客は入っているはずなのに(6,457人)、ハーフタイムにひと気のない写真が撮れてしまう。これにはたいへん驚いた。
なんでハーフタイムに人のいない瞬間のトイレの写真が撮れてしまうのか。カンセキのキャパシティは25,000人ほどで、
そのわりには客が少ないにしてもだ。これはメインSS席についてもそうで、とってもスカスカしているのである。
全体的にどこも余裕があるのはいいことだが、現状の栃木SCを考えるとゴール裏以外の熱が薄いのはマイナス要素だろう。
今季から栃木シティがJFLからJ3に昇格しており、栃木SCは大ピンチのはず。カンセキののんびり具合はある意味危険だ。

  
L: ハーフタイムに撮ったメインスタンド側のコンコース。きれいで広々として混雑していないのはいいが、それはそれでどうか。
C: 各種フードメニューの出店がスタジアム外なのに対し、スタジアム内にはオシャレな雰囲気のカフェ。椅子まで置いてある。
R: 男子トイレは大小手洗いと動線を分けている。でも済ませた後に手洗い場に行く向きが逆なので、入口から出る人がチラホラ。

後半もお互いに得点の匂いがしない内容は相変わらず。両軍とも守備がそれなりに整備されていると言えばまあそうだが、
最後のところで体を張っているのが効いている。群馬の守備を破るだけの積極性が栃木にない、というのが真相だろう。

  
L,C,R: 後半は選手交代とともに攻撃の圧力が増していくが、両軍とも守備が体を張ってゴールを決めさせない。

  
L,C: できるだけフォトジェニックな写真を貼っております。  R: 栃木はFW矢野貴章を投入。41歳でも前から全力で守備。

淡々と時間が経過していくが、群馬がシュートで終わる場面をだんだんと増やしていくと、終盤の83分に事態が動く。
群馬のFW下川が右サイドでボールを受けると前進してシュート。これがディフェンスに当たってオウンゴールとなった。
このままスコアレスなら「つかみどころのない試合」とまとめられるところだったが、群馬の愚直さが最後に効いた。

 すごくきれいなシュートかと思ったらオウンゴールなのであった。

先月の信州ダービーもそうだったが(→2025.5.14)、現在のJ3中位〜下位のサッカーはこんな感じなのかなあと思う。
体を張って守るアスリートたちを破るような攻撃をやりきるには技術やアイデアが足りず、できるだけCKに持ち込みたい。
そうしてゴール前での混戦を生みだす回数を増やして勝負を賭ける。なんとなく、そういうトレンドを感じるのである。
もちろん戦略としては間違っていないが、それってなんだか実力が拮抗した中学生の試合で狙う作戦のように思えるのだ。
やはりプロなら、そして上位カテゴリーへの昇格を狙うチームなら、何かしらのこだわりを持ってゴールを奪ってほしい。

 夜のカンセキはこんな具合なのであった。

帰りも西川田駅まで戻って電車を待ったが、ホームが混雑することはまったくなく、のんびり座って東武宇都宮駅に到着。
久しぶりのオリオン通りは、夜だと変なインド人をはじめとして雰囲気が悪いのが気になった。日本の衰退を感じるねえ。


2025.6.6 (Fri.)

現実とタイミングがバッチリかぶって話題になっているので『教皇選挙』を観てみたよ。

結論から言うと、つまらないです。基本が閉鎖された空間でのミステリなので、僕とは相性がきわめて悪いのだが、
それにしても、本当につまらない。ストーリーをただただ意外な流れにしたいだけ、という感じ。中身がない。

登場人物のキャラクターが明確でないまま選挙に突入したせいでワケがわからず、中盤までかなり苦労した。
結局は死せる孔明が生ける仲達を走らす話かと思ったら、そういうわけでもないようだ。非常に中途半端である。
安易にミステリ風味にしたせいで、この映画が何を描きたいのか、何を訴えたいのかが完全にボケてしまっている。
おそらく、観客の予測を裏切る意外性だけが、この映画をつくった目的なのだろう。なんとも下品な目的である。
各候補の政治的主張は単なる背景ってだけでほとんど意味がないし、各候補が蹴落とされていく理由もたいへん安直。
つまりはキャラクターがただの作り手のコマでしかないのだ。観客の予測を裏切るためだけの、ただの使い捨てのコマ。
彼らが何を考えていて、どう動くのか、そこをすべて主人公の主観で処理する。ドラマも何もあったもんじゃない。

閉鎖空間の安いミステリを消費するのが好きな人にはいいかもしれんが、残るものは何もないね。救いがたい駄作。


2025.6.5 (Thu.)

『柳生一族の陰謀』。東映がめちゃくちゃな気合いを入れてつくったという時代劇映画である。
萬屋錦之介と千葉真一をダブル主演に迎えて監督は深作欣二。千葉真一の柳生十兵衛役はこれが元祖となるようだ。

なんといっても特筆すべきは萬屋錦之介の但馬守で、明らかに一人だけ古めかしい歌舞伎方面の演技をやっているのだが、
それがラストの絶叫につながる狂気として成立しているのが見事すぎる。妄想に取り憑かれた者の表現として完璧だ。
特に凄いのが、何を考えているのかわからない目。彼の目が、荒唐無稽な物語に一本の芯を通しているのである。
この映画は、萬屋錦之介が用意したスケールのデカさに千葉真一をはじめとする役者たちが見事に乗った快作と言えよう。
松方弘樹は『仁義なき戦い』(→2006.3.272025.4.7)でもそうだが、情けなさをきちんと見せる演技がかっこいい。
そして成田三樹夫の公家というキャスティングの発想がとんでもない。フィクションの快感度合いを上げている。
役者がみんな持ち味を発揮しているから、あまりにもめちゃくちゃな話なんだけど、惹きつけられてしまう。

ストーリーも実は秀逸で、家光側は但馬守の狂気を受け容れることで、忠長側はその狂気に張り合っていくことで、
双方とも最初はマトモだったのにどんどん呑まれていく様子が的確に描かれる。人としての倫理を無視したことが、
すべての発端となっているのがたいへん正しい。深作名物の暴力もポイントを絞って適量で出しているから効果的だ。
これだけ派手な大嘘を役者と演出の力で破綻なくつき通している作品もそうそうないと思う。変に魅力的な映画だった。

まあでも結局、やっとること『仁義なき戦い』と一緒なんだけどな!



2025.6.3 (Tue.)

長嶋茂雄氏が亡くなった。

僕にとって長嶋氏は、チョーさんというよりは「長嶋監督」である。第二次政権、いわゆるひとつのメークドラマですね。
この時期の長嶋巨人はFA攻勢全開で、全盛期を迎えていた野村ID野球とセ・リーグの覇権をめぐって泥仕合なのであった。
本当に泥仕合で、真っ先に思い浮かぶのが乱闘シーンである。中西が殴られたり、堀内コーチのユニが引き裂かれたり。
そんな具合に仁義なきデッドヒートを繰り広げていた記憶が蘇る。そんな相手の監督はプロ野球史上空前絶後のカリスマ。
長嶋巨人はヤクルトファンにとってはあまりにも高すぎる壁だった。そのときの刷り込みが強烈で、いまだにその印象。

しかし長嶋氏個人としては、おなじみのオモシロエピソードだけでなく、仲良き事は美しき哉なエピソードが目白押しで、
あふれ出てくるそれらの情報を目にしてはしんみりしている。昭和から平成のいちばんいい時代をいちばんいい形で、
象徴としてやりきった人なのだなあと思う。お疲れ様でございました。おかげで存分に楽しませてもらったと思います。


diary 2025.5.

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